SF的発想と不謹慎


 民間会社では5カ年くらいのスパンの中期経営計画や、更にスパンを伸ばした10年くらいの長期計画を作ることが多い。上場会社などでは、その内容を公開したり、ステークホルダーに対して説明したりすることもある。

 基本的に成長戦略を策定するので、現状のシェアをどうやって伸ばすとか、新規参入分野はここだ、といった、いわゆる右肩上がりの形で戦略が語られることが多い。

 いくら未来の話とはいえ、実現できないシナリオを語るわけにはいかないので、あくまで常識の範囲(=既存の科学技術の発達の予想範囲)でそれらは描かれる。株主にしても、”我が社は2020年にどこでもドアを実用化して、2025年にはタイムマシンを実用化します。そのロードマップを以下説明します”という夢物語は聞かされたくないだろう(本当にあったらすいません)。

 その一方で、例えば、福島第一原発の廃炉に向けた議論(しつこい)は、そうした科学技術のイノベーションも含めたロードマップを描く必要があり、策定も実行も非常に苦しそうだ。

 イノベーションは不連続な事象なので、これを計画には描きにくい。でも、イノベーションが起こらないのか?と言われると、その大小レベルは違うにせよ科学技術というものはその本質として前進するものだ(=イノベーションは起こる)と私は信じている。

 原発の廃炉、即ち溶融核燃料を制御可能な状態にするために、現状よりもっと開いた形で、自由な発想を集約するような体制で検討した方が良いのではないかと思う。シビアに考えると近い将来、原発設備の構造的な劣化、設計寿命が訪れた際に、もう一度重大局面が訪れると私は予想する。そこに向けて、ある意味幅広い視点、即ちSF的視点も導入してブレーンストーミングをしておく必要があるのではないかと思う。

ロボット開発においては

・放射線に対して電子部品は本質的には弱い。

・電子部品は電子の流れを利用しているが故に応答速度が早く、かつ、
 微細化を可能としているが、電磁波との相互作用には弱い。

・電子部品はあくまで電子の流れによる回路なので、電子を使わない制御装置はできないか?

・つまり放射線(電磁波)と非干渉に動作する制御機器ができれば解決するだろう。

・例えば流体コンピュータがそれに該当するだろう。

・でも流体素子は移動速度が遅いし、微細化が難しいよね・・・。

・逆に移動速度が早く、微細化可能な流体素子が技術的にできれば解決する?

など。

 真面目に考えている方々からは”遊びじゃないんだぞ、ど素人が”とお叱りを受けそうだが、絶望的な未来を考えて悲観的になるのではなく、この手のSF的発想もまた検討する余地があるのではないかと思っている。

 ただ本職のSF作家のブレストはもっと”良い意味で”ひどいので注意が必要だ。

 小松左京『やぶれかぶれ青春記』(ケイブンシャ文庫)所収の「気✖️✖️い旅行」(かけない)や、
 かんべむさし『第二次脱出計画』(徳間文庫)の冒頭などに出てくる、SF作家内部の不謹慎を恐れない”自由な”発想で、半分真面目に考えてみた時に、不連続でぼやけている未来像が少しでも明るくなるのではないかと思う(無責任ですいません、と逃げを打っておく)。

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