閉所恐怖症にとっての新幹線の思い出


あまり気づかれていない(?)事実だが、新幹線の窓は開かない。つまり一種の閉鎖空間なのである。

閉所恐怖症の私であるが(関連記事)、新幹線の移動はどうってことはない。非常にリラックスである。ただしその気分も平常時であって、平常でないときには結構嫌な気分になることがある。5年前の夏もそうだった(回想モード)。

京都への日帰り出張であった。ちょうど台風が近づいているので、早めに帰ることにしたが、京都駅は通常運転、極めて平常な風景がそこにあった。

台風は速度を速め、既に関東に上陸している。これなら東京に着いた頃には風も止んでいそうだ。

同行した1名は「お先に」とさっさと新幹線に飛び乗って帰っていった。

しかし、何事も無いかのように新幹線のぞみを東京方面に出し続ける京都駅ホームを見て、私に油断が生まれたのである(今でこそ言えるが)。

せっかく帰るのだから、色々買い込んで帰ろうと、駅弁だの、お酒だのを購入。それでも京都駅からの新幹線の流れは平常である。

新幹線に乗ってあとは帰るだけ。座席は満員ではあるが、まあ、なんとかいけるでしょう、という気分で乗る。順調であった。名古屋までは。

新幹線が突然スピードを落とし、時々止まり始める。最終的には静岡手前で完全に止まってしまった。あれ?どうしたの?と思うと車内放送が。

「台風の影響で、河川が増水しております。この先の橋を渡るための基準水位を超えています」というアナウンスが。

あれ?台風は行ってしまったんでしょ?まだ何か障害があるの?

障害はあった。河川増水である。結果、23時になっても新幹線は動かない。食べ物、飲み物は既に無く、車内販売は売り切れ、駅に着いているわけではないので、降りることもできない。

満席なので人のイライラ感も高まる。

あれ?これって閉じ込められている?と初めて思った。急に閉所恐怖症がムクムクと出てきたのである。狭い密閉空間に、大量の人が閉じこめられている光景……これはきつかった。

その後「この先の駅で運転を取りやめます。下りのこだまを走らせますので、それに乗っていただいても構いません。このこだまは、新大阪駅で朝まで停車するので、その車内で休んでいただいても結構です」とのアナウンスが。マジすか。

ここで新たな決断が必要になる。降りて、どこかのホテルを探すか。下りこだまに乗って車内で寝るか。もはやヘロヘロだったので、下りこだまに乗った。一瞬にして、車内で寝たので、気づいたら新大阪駅だった。最初に乗った京都より、西にいた。とほほ。

私より先に行った同行者の乗った新幹線までは無事東京に行けたらしい。まさにあの判断が運命を分けたのである。

私と同じように運転打ち切りの目にあった別の同行者は、駅で降りてホテルを探したらしい。これも地獄絵図で、ホテル探しのサラリーマンだらけで、ホテルを見つけるまでに1時間以上、見つけたホテルは場末のシャワーが水にしか出ないボロホテルだったそうである。

こんなことなら京都でさっさと一泊する決断をすれば良かった。

翌朝はみどりの窓口が開く時間にダッシュ、そこでも大行列の末、東京までのキップに変換し戻ったものの、朝のダイヤも乱れ大変であった。

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