【書評】ヨッピー『明日クビになっても大丈夫!』に見る”まともな”感覚に安心する


発売されたばかりのヨッピー『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)を読んだ。

Webで見る面白い横書き記事とは異なり、若干の自己啓発系、ビジネス系風味の縦書き本である。やはり”紙の本”というのはお互い勝手が違うのか、読み進む際に、「正直ちょっと著者とのお互いの関係が掴みにくい」という感覚を受けた。

やはりオモシロ記事は読者と(基本)同じ目線で、ビジネス本はどうしても上から目線(仕方ないことだけど)だからであろうか。

そんな意識で、同じ目線のまま読み進めようとすると、最初はちょっと戸惑う。でも最後まで読み進めていくと、慣れてきて気にならなくなってくるのだが。

本書では、悩めるサラリーマンに対する生存戦略を、わかりやすく解説している。

特に注目すべきは、プロブロガー界隈の”とりあえず会社を辞めてみろ”のような無責任極まる風潮に対して、これを”信者ビジネス”だとして明確に否定していることである。

細かいところで内容に下ネタが満載ではあるが、このあたりの主張は筋が通っていて、すごくマトモで好ましいのである。

またサラリーマンからフリーランスへの段階的な移行戦略を、具体的に述べている。

ここで書かれていることの一部は、実は先ほど否定されたプロブロガー界隈の主張とも同一なのであるが、その先に彼らが語ってくるマルチビジネスにありがちな非対称性(親子関係にも似たマウンティング)が一切なく、むしろ、その道を明確に否定してくれる。

この主張は、ブロガー界隈の言説の上位互換であって、彼ら自身のロジックを内包し乗り越えてしまっている高い戦略性が見えていて、ようやくマトモなことを言ってくれる人が出て来たなあと、少し安心するのであった。

あと、一番面白かったエピソードは、フリーランスの孤独についてのシモダテツヤが言い放った「じゃ、僕らこっちなんで!」という話(p.103)である。

あまりの面白さに作り話か、お互い阿吽の呼吸で作り上げた”プロレス”なのかとも思ったが、きっと、なんとなく真実なんだろうなと思う。

そんなことを読者に思わせる”信頼の貯金”を持っているライター像を作り上げた戦略が見事に奏功している。

 

Share