【ビールテイスト飲料の市場】ホッピーとオールフリーの居酒屋における棲み分け戦略


20歳台の頃はビールが大好きで、飲み会でも初めから最後までビールだけ、二次会のカラオケまでビール一貫で十分であった。なんだかんだでビールが一番当たり外れが少ないということも選択した理由である。しかし寄る年波で、次第にビールではなく、ホッピーを頼むことが多くなっている。

ハイボールでも良いのだが、ハイボールは店によって当たり外れが大きい(と思う)。

それに比べてホッピーは基本的にクセの少ない甲類焼酎と定番のホッピーの組み合わせなので、量の問題(関連記事:ホッピー指数(外1本に対する中のおかわり回数)の提唱およびホッピーの最適解)はあるものの、味に関しては一定を保っていると思う。

そんな中、最近気になっていることがある。

「ノンアルコールビール」という存在である。

サントリー「オールフリー」などを皮切りに、飲むに耐えるノンアルコールビールが出現し(昔あった”バービカン”はいまいち旨くなかった気がする)、一つの市場を形成している。おまけにカロリーゼロも謳っているので、手に取りやすい。

私も夏にはノンアルコールビールを箱買いして、朝起きぬけや汗をかいた後などに飲んでいる。

特に朝の起きぬけのノンアルコールビールは、ビールの味という背徳感とその後にアルコールの酩酊が”やってこない”ことに対する脳みその戸惑いがあって、なかなか面白い経験ができる。

いわばビールの味を感じた時点で脳みそは既にアルコールが来たぞ!という先走り信号を出し、軽く人工的な(アルコールを使わない)酩酊感を前払いしているのではないか。その後、実際にはフライングしているので、来るべきアルコール成分が届かないので”あれっ”と戸惑う感じである。

ちょっとした作業をする際にも、酔わないビールなので非常に捗るのである。

そんな効果があるノンアルコールビールであるが、本質的にはホッピーと同じなのではなかろうか。そして、居酒屋にも当然飲めない人(ドライバーとか)用にノンアルコールビールが置いてある。

でも「オールフリーの焼酎割り」というメニューは見たことがない。

値段も同じくらいであり、形態が缶かビンの違いだけであるが、なぜ居酒屋のシーンでは完全に棲み分けが行われている(ように見える)のであろうか。

つまり、焼酎を割る割材としての「ホッピー」と、ノンアルコールとしての「(例えば)オールフリー」のように。ホッピー自体は厳密にはノンアルコールではなく(0.8%のアルコールを含む)、ノンアルコールと称することはできないが、「オールフリー」が「ホッピー」の割材の市場に入ることは、既に既存の営業網も出来上がっており、原理的には可能なはずなのだ。

サントリーなどの大企業に対する、中小企業である「ホッピービバレッジ」のニッチ戦略が奏功しているということであろうか。

確かにホッピービバレッジの売上高は2016年で36億円に対して、ビールテイスト飲料の国内市場規模をざっくり計算(注1 )してみると、2015年でおよそ576億円。これを大手4社で分け合っている状況である。

平均して約150億円規模のシェアを取り合っている大企業にしてみると、隣の36億円はあまりインパクトがないということなのであろうか(そんなことはない気もする)。

ビールテイスト飲料の市場規模自体が鈍化している中で、独立に棲み分けてきた現状の構図が今後どうなっていくのか、非常に気になるところと同時に、ホッピー側の生き残り戦略が非常に気になる(前述の通り、ホッピーはノンアル側には攻め込めない)ところである。

これを家庭で焼酎で割っても普通にいける。ただ気分的にはいまいち乗らないのも確かである。このあたりの”気分”がやはりホッピーの参入障壁(いわゆる下町感)になっているのかもしれない。

参考までに先日行ったスーパー銭湯のレストランメニューを以下に示す。見事に棲み分けができている。

注1:

【図解・経済】ノンアルコールビール市場の推移(2016年7月)より、2015年のノンアルコールビールの出荷ケース数を1,600万ケースと見積もった。

1ケースが大瓶633ml×20本換算なので、これを350mlの値段で金額に直す。

633×20÷350=36 1ケース350ml36本換算で、1本あたり100円とする。

よって1,600万ケース×36本/ケース×100円/本=576億円

参考:wikipedia:ビールテイスト飲料

 

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