【書評】施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」ーセカイ系の構造を持った文化系学生の視る夢

 施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」(REX COMICS)1巻-4巻を読んだ。

 図書室に集う高校生4人による読書ネタのほのぼのマンガであり、SF要素とブッキッシュ要素満載で面白く読める。

 読書は個人で閉じている趣味なので、なかなか共同の経験となるような形にならない。こうした形で読書趣味の人が集うとしても、読書としてはオフライン状態での会話になってしまう。更には趣味の問題があって、共通経験部分が一致すること自体も少ない。なかなか仲間を作りづらい趣味なのである。

 このマンガは、運動系の部活などのポップな要素は一切ないが、これはこれで”青春”の雰囲気がたっぷりである。

 集団から外れた群れない孤独な高校生が、図書室で「読書」という共通のマイナー趣味だけで集うことでのみ物語が進行するという、ありそうでなかったジャンルである。

 

 個性のある4人の登場人物によって図書室という閉空間で語られる読書ネタというローカルな空間が、本と読書体験を通じて、人類の知的営みすべてを含むグローバルな世界に接続される。これはいわゆる”セカイ系”の構造そのものであろう。

 そして”セカイ系”の物語構造が共通して持つように、最終的に4人の独立した登場人物が1人の人格に収斂するような、たった1人の孤独な高校生が図書室で視ている夢のような世界でもある。いつ何どきそのような終わり方をしても納得できそうな儚さがある。

 

 仮にこの物語が登場人物誰かの夢であった場合、4人のうち誰の夢なのであろうか、ということを考えてみる。

 私は、意外と一番キャラの薄めな図書委員の「長谷川スミカ」さんなのではと想像している。

 ちなみに私がキャラ的に一番好きなのは、この物語の中で最も読書マニアである「神林しおり」さんである。

 ある意味ブッキッシュと読書好きの間を逡巡しながらも、読書を楽しんでいる姿が良いのである。外見も、おかっぱロングで読書ファンのど真ん中であろう。

 SFファンに「SFとは?」と聞いたら逆ギレで返答。プロレスファンに「プロレスとは?」と聞いても同様の反応があります。

 読書好きの真骨頂。かっこいい。

 装丁好きをからかわれて、開き直って本を進める。”布教用で2冊あるから”というのが良い(結構そういうケースはある)。

 

 巨匠トルストイ「イワン・イリイチの死」を読み込む神林さん。面白い本はジャンルを問わないのである。

 

 貸した本を町田さわ子に汚されてキレる神林さん。クールである。この後きちんと仲直りする。

 神林さんを模写してみた。

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