【書評】仁木悦子「猫は知っていた」ー”おかめどんぐり”な主人公による爽やかな謎解き


 仁木悦子「猫は知っていた」を読んだ。

 1957年に出版された江戸川乱歩賞の受賞作品である。

 時代背景は古く、解説にもあるように出てくるガジェットは今のものではない。しかしながら、プロット自体は全く古びてはおらず、謎解きとしても愉しい読書体験ができる。

 推理小説としてしっかりとした構成であり、ミステリアスで何かを隠しているような多くの登場人物や、それらを巡る謎が次々と提示され、結末も見事な謎解きになっている。

 主人公も作者と同名の音大生仁木悦子と、探偵役の兄が配置され、このような場合得てして思い入れ過剰なキャラ付けがされそうなところを抑え気味に描写しており、この点としても作者の非凡な力量がうかがえるのである。

 ただ、主人公で作者と同名の仁木悦子の身長体重が、身長145cm、体重60kgと、完全にチンチクリンなのは少々可愛そう?であるが、これが唯一の違和感のある時代背景(滋養があるほうが魅力的?)なのであろうか。記述でも”おかめどんぐりのような、ずんぐりむっくり”と記載されている(p.36)。

 ちなみに、森三中の村上さんが身長146cm、体重60kgなので、それを知った上で読むと、更に味わい深い(?)。新装版のカバー絵は少々現代的すぎるのであろうか。

 江戸川乱歩が仁木悦子を「日本のクリスティー」と評したのも納得の作品で、爽やかな読後感を持ちつつ、しっかりとしたプロットで読み応えのある推理小説である。

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