地元にある老舗の和菓子屋が、値崩れしつつある1枚70円のマスクのディストリビューターになった日、コンビニでマスクを見かけてしまう


 長く流通が滞っていたマスク。

 自粛期間中、やることがなく、コンビニやドラッグストアに1日1回は買い物に行くが、ついぞ見かけたことは無かった。

 元々花粉症のため少し備蓄用として多めに保有していたこともあると同時に、途中からは家にあったガーゼ肌着を再利用する自作立体布マスクが意外と繰り返し使えることがわかったため、実質新たに購入する必要性は薄れていた。

 そうしたこともあって、マスクが流通しないことによる精神的焦りもなくなった。ただ、当然のことながら本日(5/12)現在アベノマスクは到着していない。

 やはり、繰り返し使える布マスクの安心感は良く、精神的な問題がなくなった。もともと咳(くしゃみ)エチケットのためなので、口の周りを覆えれば良いと認識していれば、多少の見てくれなんぞ気にならないのである。

 そんなこんなの状況で、だんだんとマスクの値崩れ、露天売りのニュースも聞こえてきた。

 そりゃそうだ、本来マスクがその機能として必要となる医療現場やクリーンルームなどにおいては、このような流通的に微妙な品質的保証がないマスクはそもそも購入されないし、一般大衆であっても、私のように布マスクで一度精神的に事足りたら、もともと高価でなかった所詮”使い捨てマスク”をわざわざ有難がって目の色変えて購入する意識は生まれないであろう。

 そんな中、少々切なくなったのは、地元にある老舗和菓子屋の店先に「マスクあります 50枚 3,500円」という張り紙を見たことである。まあ、好意なのか、和菓子の売上をカバーする(マスクだけに)ためなのかはわからない。色々事情はあるのであろう。

 しかし、1枚70円のマスク。

 既に値崩れを起こしつつある状況で、捌ききれない在庫の押し付けあいが始まっているのであろう。そして、個人商店の和菓子屋にまでマスクを卸して売ってしまう、新型コロナが憎らしい。

 遠い昔、「機動戦士ガンダム」のプラモデルが爆発的に流行した際に、普段プラモなんか売らない文房具屋などが、人気のない訳のわからない聞いたこともない銘柄のプラモと抱き合わせで高価販売して、それを買わされていた記憶がよみがえる。ちなみにその後、売った側はそうした記憶を忘れ、”うちはそんなことはしなかった”みたいな言い訳をされて、こちらは子供心にも”嘘つけ、この偽善者”という大人を信じられなくなったほろ苦い経験もセットによみがえってきた。

 この時と同じような、ババ抜きで負けた人を見るような、切なさを感じる。

 そんな思いを持ってコンビニに行くと、初めてマスク(だけでなくアルコールティッシュ)が棚に陳列されて売っているのを発見した。

近所のコンビニで見かけた、小出しにされたマスクとアルコールティッシュ。

 こうして、次第に我々の「日常」に戻っていくのであろう。

 コンビニに並ぶマスクも、今さらがっつく必要もないと思え、別に買わなかった。

 自作の布マスクがあるからである。

 そして、私の花粉症シーズンも、いつの間にか終わっていたからである。

2020.06.06 追記 通りかかると「50枚3,000円」になっていた。悲しみが高まる。

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