【書評】山田正紀「花面祭 MASQUERADE」華道を舞台にした、ハッピーエンドを許さない連環的な読後感を持つ本格ミステリ

 山田正紀「花面祭 MASQUERADE」(講談社文庫)を読んだ。

 華道を舞台にしたミステリであり、4人の若い女性華道師範による、秘伝の花”しきの花”をめぐる謎解きを縦糸にしながら、過去にこの流派で起こった”事件”をめぐる大きな謎解きがリンクする。

 4人のヒロインたちは、それぞれ春夏秋冬の”四季”がシンボライズされている。小説の中では、これらの四季に応じた花々が登場し、いわばむせ返るような花の風景が咲き乱れるのである。

 更に過去の事件と、ストーリー自体の現代をめぐっては”輪廻転生”がキーワードとなる。”しきの花”は輪廻転生もシンボライズされているとされ、”しき”=死期という仕掛けもある。

 ミステリ空間では、”しきの花”をキーワードとして、むせ返るような「花」の乱舞の中で、次第に謎が解かれていく。

 本格ミステリらしく、大がかりなトリックも仕掛けられ、ある種のカタルシスも得られるが、本書の特色としては、こうしたミステリアスな雰囲気の中で最後まで閉じることであろう。本来ヒロイックなはずの「探偵」自体も、最後にはこの物語から明確に排除されてしまうのである。

 こうした読後感はある意味著者の真骨頂で、最後まで読者にある種の新規な仕掛けを与えるサービス精神とも思える。

 本来カタルシスや安心感を与えるはずの、読後感においてミステリとしては収束しておきながら、物語としては安易に終わらせない、いわば連環的なイメージを与えている。

 これはすなわち本書のメインテーマである「輪廻転生」そのもので、ミステリの題材というより著者の持つSF的志向がうまく融合されたものと言える。

 

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