以前、最近流行りの1人焼肉店「立ち喰い焼肉 治郎丸 」を紹介したが、私が1人焼肉と聞いて思い浮かぶのは、平塚駅にあるこの「どさん娘」である。茅ヶ崎、平塚、伊勢原に「ジンギスカン」という名前の店を展開している大衆的焼肉チェーンの関連店である。
他の店がいわゆる焼肉屋の店構えであるが、この店だけはラーメン屋の店構えで、昼から営業している。1人用のコンロが置いてあるカウンターがある(ただし3台だけ)ので、ソロ焼肉を楽しむことができる。
昔茅ヶ崎に住んでいた頃に、休日の昼下がりにここで一人心ゆくまでホッピーとジンギスカンを食べ続けるのが楽しみであった。平塚競輪帰りの常連などの話をツマミに一人カウンターで酒を飲むのがなんとも落ち着くのである。
価格も安く、また店構えもはっきり言ってボロボロであり、非常に風情がある。
茅ヶ崎駅の「ジンギスカン」には、かつて茅ヶ崎在住の芥川賞作家、故・開高健が、赤ワイン持ち込みでやってきてジンギスカンやホルモンを食べていたというエピソードを見たことがある(店名リンク先参照)。なかなかのマナー違反であるが、ある意味フリーダムな感じの店ではあるので、さもありなんと思う部分もある。
平塚駅前にある「どさん娘」。一見はラーメン屋のような(実際ラーメンもある)店であるが、焼肉が食べられる。
このような一人用グリルがカウンターに3台ある。
ここのホッピー350円は氷がない。そしてかなりの焼酎の量である。
今回は、ジンギスカン350円を2人前、ホルモン300円を1人前をまず注文である。
10年前は、どちらも250円だった気もするが、やはり時代というものであろうか。
ここのジンギスカンは味がつけられており、注文後に何やらカウンターで「モミモミ」している。熟成されていて非常に美味しいのである。
またホルモンはこの近辺で流行りのシロコロ的な脂が多いタイプでなく、皮ベースである。
10年くらい前に、この店でこんなことがあった。
先客の老人が帰る際に「今日のジン(ジンギスカンのこと)は、いつもよりうまかったよ」と店員さんに声をかけ、店員さんもそれに「ありがとうございます!」と回答していた。ここまでは普通の光景である。
しかし、そのお客が店を出た後に、首をひねりながら「おかしいなあ、今日の肉はいつもより古いんだけどなあ」という正直な独り言を呟き、それを聞かされた、そのジンギスカンを正に現在進行中で食べている私を含めたお客が皆ちょっと微妙な空気になったことがある。
要するに、そういうことなのである(全てを悟りきった表情でニッコリ)。
肉の熟成というものである。こうした期せずしてがあるのも、大衆と寄り添った伝統店の証拠であろう。
ホッピー中お代わりである。
なんだかんだで更にカルビ450円、ジンギスカンを更に追加し、ベロンベロンである。