BECK’S「小倉クリームチーズホイップトースト」の脳みそに直撃する激甘&旨さに、花輪和一の傑作マンガ「刑務所の中」を思い出す

 駅構内にあるBECK’Sコーヒーショップ。ここはJR系列なので、エキナカに良く見かけるが、なかなか侮れないメニューがある。

 それがこの「小倉クリームチーズホイップトースト」である。小倉あんとクリームチーズと生クリームを混ぜてトーストにたっぷり乗せたものであり、甘党には堪えられないメニューなのである。

 先日の出張途中で立ち寄った「小倉クリームチーズホイップトースト」のサイドメニューつきセット570円である。甘すぎるが、幸せな光景である。

 菓子パンでも「小倉+マーガリン」が美味いのはわかっており、それに近いのだが、それよりもよりソフトになっている感じ。

 酒を飲んだ後や、とにかく甘いものを食べたい時にピッタリの激ウマ食なのである。ただカロリーは気になる。この単品だけで463kcalとなかなかのものである。

 とにかく食べると、”甘さ”が脳みそに直撃し、天使がフワフワと周囲を揺曳しだす、というちょっと危険な香りすらするメニューなのである。

 甘いもの、糖分はやはり中毒性がある。吾妻ひでお「失踪日記」のアル中編でも、”禁酒中(断酒中)は甘いものをアルコールの代わりに欲する”といった記述もある。

 また、自身の刑務所体験を描いた傑作、花輪和一「刑務所の中」でも限られた食事制限の中で、たまに出る甘いメニューを食べた際の受刑者たちのヨロコビが、花輪風の民話怪異チックな絵柄で描写される。

花輪和一「刑務所の中」(青林工藝舎)p.173 脳みそが溶けているw

 このように脳がとろけるのである。”ヘ●インなんか目じゃない”(同書p.174)のである(ものスゴイ吹っ切れた記述)。

 先日私より年上の人と飲んだ際に、帰りにこれを教えたら私以上に激ハマりされ、その後会うたびに、締めに二人で「小倉クリームチーズホイップトースト」を食べている。

 酔っ払ったオッさん二人が、キャッキャしながらスイーツを食べるという、傍目にものすごい気持ち悪い光景を晒してしまっているのである。

 

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2019年相模川のテナガエビ開幕(・・・ヌマチチブも好調)

 2019年の相模川河口の釣りであるが、依然としてヌマチチブの猛攻が続いている。

関連記事:【2019年】いつもの相模川河口でテナガエビ仕掛け2号針+ノベ竿により、ヌマチチブが爆釣・・・そして佃煮へ

 愛用しているテナガエビ仕掛け「マルフジK-036」も発売再開されたので、早速通販でゲット。ただし針の形状がモデルチェンジしており、少々特異な形になっている。

 今回梅雨時の切れ目を縫っていつもの場所に釣行し、ようやく少々のテナガエビがゲットできた。

 相変わらずのヌマチチブの猛攻はすごく、成長したサイズがガンガンアタるのは良いのだが、流石に苦戦した。

 しかしながら、なんとか4匹ゲット。やはりプレミアム感がある。

 やはり条件の一つとして、雨の後+干潮付近の時合というのがポイントのような気がする。

 ちなみにこの4匹を釣るために掛かったヌマチチブは約40匹。佃煮にして食べた。レシピは、料理酒で臭みを消しておいて、麺つゆ+砂糖(多め)+みりん+日本酒で煮詰めるだけ。これで十分美味い。

 

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立ち飲み屋探訪:北浦和駅「COVO」美味い日本酒を楽しめるコンパクトな店が良い

 京浜東北線の北浦和駅から徒歩2分のところにある「COVO」に入店。10人入ればいっぱいの小さな店である。

 隣接するイタリア料理屋?とオーナーが同じ模様で、店員の行き来がある。

 セレクトされた日本酒の飲み比べができる。ワンオーダーセットなるものがあり、まずは1,000円払って、小さいお猪口でお酒を3種類、おつまみを2品選べる。

 メニューを見ながら、日本酒は、初孫、久保田、と自分が知っている銘柄を選択し、そして後1点は初めて見る「亀の海 純米吟醸 Malique(マリック)」を注文。つまみはポテサラとイカの塩辛。

 亀の海 純米吟醸 Malique(マリック)は果物のような強い吟醸香で非常に美味い。リンゴ酸を多めに含有しており、マリックもラテン語のmalum(=リンゴ)に由来しているようだ。結構気に入ったので、その後追加でこのお酒を大グラスで2杯(一杯500円)飲んで、すっかり良い気持ちである。

 吟醸香が気に入ったのを見たからか、店員さんがサービスで、秋田の「刈穂 ホワイトラベル」を試飲させてくれた。微発泡で少し濁りがあり、これもフルーティで美味かった。 

 全くの無根拠であるが、あまり採算を重要視していない感じの雰囲気があり、お客にとってはおトクな感じで日本酒に親しめそうな良店である。商売っ気がなさそうと言おうか。

 小さめの店であり、大人数で訪れるのではなく1人日本酒を愉しむのに最適であろう。

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復刊2号目の「磯・投げ情報」8月号を購入(追記あり)

 5月に復刊した「磯・投げ情報」の8月号をゲット。

 余計なお世話だが、ご祝儀相場もだんだん薄れてきて、これからが正念場であろう。

 今回は個人的には、夏が近くなってきたこともあり、ムラソイのゴロタ穴釣り、テナガエビ、ウナギなどの汽水域釣りの記事が刺さった。

 夏の暑い中、伊豆のゴロタ場(岩だらけの海岸のこと;下の参考写真参照)を汗だくで歩きながら、ムラソイを釣ったことを思い出す。

 引き潮の時などは、「こんな浅いところに?」と言う位の浅場に結構なサイズのムラソイが潜んでいたりして楽しいのだが、炎天下で足場の悪い中長距離を移動するという、なかなかハードな釣りである。

 今後の特集に期待するテーマは、

 ①パッキング
 ②車中泊+釣り
 ③釣り+チェアリング+料理
 ④外道系の料理(「外道楽」という企画のリターンズ)
 ⑤ソロ釣行

 である。

 まあ、この気持ちがここに書いて届く訳ではないが、一応記しておく。

 あとはM様のコラムも復活キボンヌ。

(追記)↑と書いたら、復活する模様。

 

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【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』45巻 まさかの突然の婚約宣言!・・・ただし竹股の(苦笑)

 このところウォッチしている、ラズウェル細木『酒のほそ道』45巻を読んだ。サイドストーリーの思わせぶりでヤキモキされる日々が続いていたが、45巻ではどうであろうか。

関連記事:

【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』44巻 松島さんと岩間の関係性と情報量制限

【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』43巻 男女関係の伏線展開とストーリーラインの複雑化に戸惑う

【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』42巻 エビちゃんと諏訪さんの結婚報告と知識ロンダリングの表現

【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』41巻 なんと!エビちゃんと諏訪さんが

 ドキドキしながら読み進めると、若干それらしき主人公「岩間」と「かすみちゃん」の仕事納めでの二人きりの立ち飲みエピソードはあったが、特に進展がある訳ではない。

 これまでの伏線であった松島さんネタなど、知らぬふりである。

 どうなっているのか。

 そんな中、誰も望んでいないであろうキャラ、岩間の飲み友達の一人「竹股(たけのまた)」が、突然の告白。

 ・・・正直だからどうなの?と言う感じ。エビちゃん諏訪さんの時の驚きもない。

 作者と同様の山形出身の男性であるが、可もなく不可もなく、それが何かに繋がって行く感じもない。しかも相手は京都の女性。遠距離である設定だが、これからこのエピソードをメインストリームに繋げる意図があるのであろうか?謎である。

関連記事:【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』46巻–ラブコメ路線になってしまった酒マンガであるが、あの麗ちゃんはどうなった?という悩み

 

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平塚ラオシャン系のもう一つの雄!「花水ラオシャン 田村店」で昼下がりの「わかめタンメン 大盛り」650円は、かなりのデカ盛り

 平塚のソウルフード”ラオシャン”系には、色々すったもんだがある模様で詳細は知らないが、とにかく2系統あるらしい。

 漢字の「老郷(ラオシャン)」とカタカナの「花水ラオシャン」の2系統である。

関連記事:【ラーメン】平塚のソウルフード 「老郷(ラオシャン)」のタンメン

関連記事:飲み会前に食べたくなって、久々の紅谷町にある老郷(ラオシャン)本店でタンメン

 上記のように、駅前にある「老郷」は行ったことがあるが、「花水ラオシャン」は駅から離れており、なかなか行くことができなかった。

 今回、たまたま平塚駅からバスで20分くらいある「花水ラオシャン 田村店」で昼食を食べることができた。

 寒川からの県道44号線と、国道129号線に沿った旧道沿いが交差する田村十字路付近にある。このあたりは、ちょうど平塚駅と本厚木駅の中間地点あたりであろうか。ある意味、谷間のような雰囲気のあるちょっとディープな街並みなのである。

 時刻は11時45分。店に入ると老人たち(もっとハッキリ言えばお婆さん軍団)が座敷で雑談している。「やってますか?」と尋ねるとおもむろに1人のおばあさんが立ち上がり、厨房へ。やっているらしい。

 メニューは「老郷」のタンメンと餃子の一点勝負だけでなく、色々ある。わかめタンメン、野菜タンメン、チャーハン、ドライカレー、チキンライス、オムライス、餃子など。「老郷」では無かった大盛りもある。

 老人の憩いの場になっているようで話がはずむ中、まずは「わかめタンメン 大盛り」650円を注文。

 到着。で、でかい。麺は2倍くらいありそう。

 味はラオシャンの名前同様に酢の利いたスープが良い。具はわかめと刻み玉ねぎだけと言うシンプルさ。老郷ではこれ以外にメンマがあったが、無くてもいい感じ。ラー油もテーブルにあり、味変もできる。「味が薄かったら言ってね」と言う一言があったが、ちょうど良い感じであった。

 定番の柔らか麺の量がなかなかであったが、完食。うまかった。

 夜は居酒屋にもなっているようで、面白い店である。

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立ち飲み屋探訪:大和駅「PubSu」スタンディング&開放系本格バーでシングルモルトをストレートで

 大和駅北口から徒歩5分、「立ち飲み ほたる」の先の路地にある「Pub Su」に入店。

 10人くらいの小さい空間に洋酒のビンが所狭しと密集。素晴らしい風景。

 バーでありながら立ち飲みでという形式。システムは、キャッシュオンで小さいお皿にお金を入れてその都度精算である。

 一般的なバーの扉は重厚で外から中の様子が見えない形式が多いが、ここは立ち飲みなので開放系である。これは敷居を低くする戦略で、効果的に働いていると思う。

 こういう雰囲気のところでは、あまり炭酸系は飲みたくなく、ストレートで美味いお酒を少量楽しむ形にシフト。

 まずは豊富なメニューの中からシングルモルト「グレンフィディック」をストレートで。600円だが、19:00までのハッピーアワーで-100円となった。素晴らしい。チェイサーもお願いする。

 ツマミも色々あり、フィッシュ&チップスがそそったが、量がわからないので「イカフライ&チップス」150円を注文。

 続いては「ラフロイグ」700円(ハッピーアワーなので600円)を注文。これは好きなシングルモルトで、スモーキー感が堪らないのである。葉巻が吸いたくなる(吸わないけど)。

 ラフロイグとイカフライ&チップス。ツマミは結構量が多く、お買い得感がすごい。やはり美味い酒を少しずつ飲んでいくのは贅沢な時間である。

 その意味でこの立ち飲み形式(扉開放式)での本格バーというのは、結構「あり」で、クローズドになりがちなこの手の店としては酒飲みの裾野を広げる役割を担ってくれそうで期待している。

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富士そばの商品開発力恐るべし!やはり出てきた「煮干しつけ蕎麦」は500円で大盛り無料、更にスープをミニチャーシュー丼とコラボすると二重に美味い

 前々から富士そばの商品開発力には関心してきた。まあ、確かに「ポテトチップスそば」のようなちょっと微妙(よく行く店のメニューからは消えた)なものもあるが、なんだかんだでサラリーマンのニーズに応えてくれるニクい店なのである。

関連記事:富士そば町田店で「ポテトチップスそば」を食べてみた

 今回気づくのが遅れてしまっていたが、「煮干しつけそば」を発見、早速購入。「煮干しラーメン」が既にうまいことは知っているので、これから夏に向けて当然出てくるであろうと思っていたら、やはり出てきた。

関連記事:富士そばの「煮干しラーメン」が意外に美味い件

 500円で食券を買って渡すと「今、大盛り無料ですけど、どうします?」と聞かれた。心の中で狂喜しつつもクールに「お願いします」。素晴らしい。

 熱盛りと冷盛りが選べる。ここは冷盛りで。3分くらいの茹で時間がかかって到着。今回は思うところあって(後述)、ミニチャーシュー丼230円も一緒に。

 やはり煮干しスープが美味いので、想像通りの美味さであっという間に大盛り蕎麦は完食。その後残った煮干しスープをミニチャーシュー丼に注ぎ、雑炊風にして食べる。ネギとチャーシューにコクのあるスープが絡んでこれまた美味い。

 価格帯的には、明らかに普通のラーメン屋より、安く早いが、意外とその領域とはバッティングしていないように思える。

 この商品であれば、例えば「嵐 花月」の名作「豚そば銀次郎」「豚そばつけ麺」と競合しそうで、富士そばの方が価格が安いのだが、そんな感じもない(関連記事:【ラーメン】らあめん花月嵐の「豚そば銀次郎」が定番で旨い)。

 私としてはどちらも好きなので、市場を食い合って欲しくはないのだが、単純に疑問である。

 棲み分けているとして、その理由は何であろうか。特にラーメン屋の持つ独特な価格帯の意味は何処から来るのであろうか。やはり、ラーメン屋専門店が持つ「のれん」の効果、即ちブランド力ということが想像されるが、結論は出ていない。

その他の富士そば関連記事:

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立ち飲み屋探訪:海老名駅「鮪市場」駅構内のまぐろ丼の店が夜は立ち飲みに!「まぐろブツ海苔」290円がボリュームもあって美味い

 海老名駅で、小田急線から相鉄線への乗り換えの途中、相鉄線改札近くにある「鮪市場」。ここは昼間はまぐろ丼の店で、食券方式で食事ができる(椅子もある)が、17:00を境に立ち飲み屋に変わる。

 立ち飲み屋では、レジにて注文して受け渡すキャッシュオン・セルフ方式になるので、開店直後はちょっとした入店行列ができる。

 濃さが2倍の「男のハイボール」490円と名物の「まぐろブツ海苔」290円を注文。

 「まぐろブツ海苔」はさすがまぐろ専門だけあって、値段の割にボリューム十分で1人前としては十分である。

 昼間のまぐろ丼メニューは下記の写真のような感じである(この時間帯でもお酒は飲める)。まぐろ丼の店のまぐろなので、やはりねっとりと美味い。醤油もだし醤油と通常の醤油があり、これもポイントが高い。

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「マイクロマネジメント」を褒め言葉だと信じていたあの頃(遠い目で)

 「マイクロマネジメント」という言葉をご存じであろうか。

 Wikipediaにも項目があり、

マイクロマネジメントとは、管理者である上司が部下の業務に強い監督・干渉を行うことで、 一般には否定的な意味で用いられる。マイクロマネジメントを行う管理者は、業務のあらゆる手順を監督し、意志決定の一切を部下に任せない。

Wikipedia「マイクロマネジメント」より引用

 となっている。

 また以下のような記事もある。

外部リンク:上司の常識「マイクロマネジメント」とは?部下と組織を壊すマイクロマネ ジメントの特徴と対処法

 要するに、マネジメントにおいて上司が部下へ過剰な干渉を行うことを指し、一般的に組織運営としてマイナス方向に作用する行為のことを指すようだ。

 Google先生の「マイクロマネジメント」の検索候補も、否定的な候補が並ぶ。

 上司側は「良かれ」と思うが、部下側は苦痛と感じており、上司-部下の関係性の中で非対称な様相を見せている。

 第三者的視点、あるいは、部下側からしてみるとパワハラに近いものがあるにも関わらず、 あくまで上司は通常のマネジメントであり、他者がそう思うより感度が低いのもパワハラと同様の構図である。

 場合によっては、その上司じしんも、更に自分の上司からマイクロマネジメントを受けている連鎖的状況もありえそうだが、あくまで自分に置き換えて、自分から気づくことも少ないと思える。

 本記事では、私の経験であり、ちょっと状況が異なるのだが「マイクロマネジメント」に関して気になる会話の思い出があったので、紹介したい。

 あるプロジェクトで、私はいわゆる事務方で、会議のファシリテーションや裏方作業をしていた。

 事務方の大きな役目として、会議で出たアクションアイテムを管理し、きちんと実行まで確認し、クローズさせる、という地味な業務がある。

 地味な作業と書いたが、意外に面倒臭いものがある。

 アクションアイテムの発生は非常に単純で、会議の場で指摘者(一般的に偉い人)が「〜しなさい」→発表者「はい、わかりました」となることで公の場でコミットされる。この段階でズレは生じていない。

 しかし実行の段階に至ると、そう単純な話ではない。

 時間が経過し、その場の緊張感が薄れるとともに「やる気」が薄れてくるのか、 その場で言わなかった言い訳を駆使して、なかなか実行(アクション)しないアイテムが出てくるのだ。

 内容の緊急度によっては、次以降の会議の席上で「まだやっていないのか」という再度の直接的な怒りをくらって修正される場合もある。ただ、それほど緊急性のないアイテムだと、裏技、寝技を駆使してうやむやにされる場合もある。

 実は、こうしたうやむや系のアイテムが後々火を噴くことも経験しているので、事務方としては、アクションアイテムのリストを作り、きめ細やかに管理する。

 言った側というのは、自分が言った時点で速やかに実行されているはずだ、と思うのが世の常なので、「まだこんなにクローズしていないアクションアイテムがあります」などと事務方が報告するのも、別の怒りに着火して燃え広がる恐れがあるので、あまりこの手段は頻繁には使うことはできない。もうどうにも無くなった最後の手段に残すことが一般的である。

 実行側としても「事務方がチクリやがって」という心情が起こり事務方と実行側の関係が悪化する可能性もあるので、こうしたことも事務方としては懸念材料である。

 しかし、物事の大前提として「約束したことを実行する」のは基本原則であって、それを裏で言い訳して実行しないのは単純にルール違反であろう。 とは言うものの、一定の規模の組織の中で様々なしがらみに縛られざるを得ない事務方としては、原理原則だけで物事が進まない現状も理解しており、なかなか悩ましい問題なのである。

 そんな中、あるプロジェクトのアクションアイテムで、こんなものがあった。ざっくり言うと、

(1)ある期日までにA装置を完成させる必要がある

(2)そのためには、ある期日までにA装置の部品を手配開始する必要がある(部品納期の関係)

(3)部品手配するためには予算が必要で、その予算を確保するためには、ある期日までに契約を締結する必要がある

 という状況があり、これを端的に言うと、「ある期日までに契約を締結しないと、A装置の完成が遅れる」ということを意味している。

 そのため、アクションアイテムとしては「○月×日までに契約を締結すること」となる。

 しかし、契約というものは法務部門や知財部門も絡み、部門間調整がある上に、当事者同士の利害調整もあったりして、なかなか予定日程通りにはいかないことが多い。

 そして、今回もそうなりつつあった。

 結局、同じ会社であっても部門をまたがると伝言ゲームのように当事者意識は薄まっていき、日程遵守のヒリヒリ感は伝わらないことが多いので、 ますます遅れが現実となる可能性が高まっているのであった。これが現場が独走する「フロントラインシンドローム」を生む原因(関連記事:フロントライン・シンドロームと兵站の問題)にもなっている。

 指摘者は基本的に上位、即ち偉い人が多いので、そんな下々の細かい事情は知ったことではないので、そんな部門間の調整遅れを理由にしたら、 ますます怒られるのも必定である。

 私は事務方で、その直接的なアイテムのオーナーではないが、この日程遅れの可能性に焦っていた。

 契約モノなので、裏工作もできず、正攻法でやるしかない。

 だとすると、A装置の完成が遅れる可能性は高い。

 遅れが現実になると、遅れの挽回など様々な指摘に波及することになる。これによるプロジェクト全体への悪影響を想像すると事務方としても早めに火消しをする必要がある。

 遅れの可能性が高まっているこの状態こそ、先読みによりそのためのリスクヘッジを考える必要があると判断し、少し内部調整のため動いていたのである。

 そんな状況の中、”仮に契約が期日に間に合わないと、こうなる、そうしたらこうなるので、他の代替手段を今から考えた方が良いのでは”、という説明を、ある開発責任者へ相談していた際の話である。

 要するに、何かあった場合のリスクを理解してもらい、それに応じたリスクヘッジを主体となる部門で考えてもらおうとしたのである。

 そこで一通り私の話を聞いた相手の一言が「うーん、何か細かい話だね。●●さん(私のこと)のマイクロマネジメントみたいな動きはこちらではできないからなあ」

という言葉であった。

 ここで、私は当時マイクロマネジメントという言葉を知らなかったので、なぜか褒められたことと勘違いしたのである。

 当時、「マイクロマシン」など、最先端の微細加工、精密加工を用いた技術用語があった。そういった最先端系のイメージの言葉と勘違いしたのである。また、画一的で硬直的な”モノシリックなサービス”と比較して、きめ細かい”マイクロサービス”などは明らかに良い言葉としてあったので、そのイメージもあった。

 なるほど、きめ細かく、精密なマネジメントのことね、と合点してしまったのである。

 結局、そのアクションアイテムは小炎上で済み(?)、リスクヘッジは必要なかった。

 一安心したある日、そういえばこんなことを言われていたな、と「マイクロマネジメント」を検索した際の私の驚きと心情といったら・・・。

 実際は、なんと褒められているどころか、批判されていたのである。その後もその人に褒められたと思い好印象を持っていたお人好しな自分の性格にも呆れる。

 まあ、また一つ大人になったと言うことで納得するしかない(泣きながら)。

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