マンガ, 読書メモ

【書評】谷川ニコ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』26巻 ”純粋なバカ”の登場は作品の方向性にどう影響するか


谷川ニコ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』26巻を読んだ。

作中の時間の流れが着実に緩やかになり、今回はこの1巻で約1日の経過、文化祭1日目の後半から2日目の前半までを描く。前回同様、黒木さんの周辺の変態オールスターが絡み合う展開で、前巻で発生した黒木弟の演劇における”事件”(本の帯に書いてあるが)を軸に進んでいく。

今回は、黒木弟の同級生にして、黒木弟と友人朱里さんを”取り持とう”とする沙弥加さんが話題を独占している。良い女アピールをして親友の片思いを成就させようとするも、その仕掛けが全て空回り(というか自分の利得になる)に陥る展開。悪意がないものの、さりとて自分がメリットを受けるのは受け入れそうな雰囲気を漂わせるという非常に迷惑な存在として描かれる。

まあ、悪意が無いものの本質的には自分に酔っているナルシストキャラであるが、問題は異常なまでに馬力があり行動力があるため、引き起こす問題が拡大し続けている状況なのである。

これはこれで面白い。作中では上記のように純粋なバカ、という表現で一刀両断にされている。確かに、なるほど”バカならしょうがない”と思える部分もあるが、一歩間違うと作品そのものにも不快感のダメージを与えてしまう恐れもある。要するに、”やる気のある無能”がその実力を発揮しているのである。正直、なかなかの危険性のあるキャラが前に出てきた感である。

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作成者: tankidesurvival

・男性 ・アラフィフ ・技術コンサルタント ・日本国内の出張が多い ・転職を経験している ・中島みゆきが好き ・古本屋が好き