小松左京「結晶星団」(角川文庫)を読んだ。 先日実家に帰った際に、昔の自分の本棚から再発掘したものである。 当時は、角川文庫で多くの小松作品が読めた。本屋で上記の緑の背表紙がずらっと並んでいたのである。ちなみにこの文 …
カテゴリー: 読書
移転した”ものづくり文献調査の聖地”県立川崎図書館へ行って、マニアックな技術系雑誌を堪能する
ものづくりを生業(なりわい)とする技術者にとって、かつて川崎競輪場、(旧)川崎球場の隣にあった県立川崎図書館は、なかなか使い勝手の良い強力な図書館であった。 JISなどの各種規格類や、めったに書店に並ばない技術書、科 …
【書評】田嶋雅巳「炭坑美人 闇を灯す女たち」(築地書店)–明治、大正生まれの女性たちが生きた過酷な炭坑労働の聞き書き
最近、笑いを提供するはずの職業の人々に関して、見る人間の気持ちをかき乱すような情報を見たくなくても目にするようになり、いたたまれない気持ちになっている。 そんな中、過酷な炭坑(炭鉱)労働に従事してきた女性の聞き書きを …
【書評】機本伸司「神様のパズル」ハードSFでは、作者にとって”天才の先端性”と”大衆への啓蒙性”のジレンマをどうやって解決するかが悩ましい
2002年の小松左京賞受賞作である機本伸司「神様のパズル」を(今更ながら)読んだ。 本書のメインテーマは、ハードSFの王道とも言える「宇宙を作り出す方法の可能性」という設定。そこに素粒子物理や大型加速器施設などの物理 …
【書評】遠藤周作「わたしが・棄てた・女」-通俗的な世界に立ち現れる他人の苦しみと連帯するキリストの姿
遠藤周作「わたしが・棄てた・女」(講談社文庫)を読んだ。1963年発表の作品であり、50年以上前の作品になる。 遠藤の”通俗的”小説に位置づけられる作品であり、内容も当時の世相に沿った”わかりやすい”悲劇である。しか …
【書評】小松左京「召集令状」(角川文庫)小松SFの原点としての戦争体験
小松左京「召集令状」(角川文庫)を読んだ。 戦後五十周年にあたる1995年(平成7年)の「角川文庫で読む戦後50年」フェアで新たに編まれた、小松の”戦争もの”8編を集めた文庫である。実質的デビュー作「地には平和を」も …
【書評】サキ傑作選(ハルキ文庫)–鋭すぎる針のような小説群は頭の良い人に余命宣告をされているような気持ちになる
「サキ傑作選」(ハルキ文庫)を読んだ。以前、岩波文庫の「サキ傑作集」は読んでいたが、あまりダブりはなく、相変わらずの切れ味鋭いブラックな短編小説群であった。 本書は230ページで25編が収められている。岩波文庫では2 …
【書評】ラズウェル細木『酒のほそ道』44巻 松島さんと岩間の関係性と情報量制限
先日発売のラズウェル細木『酒のほそ道』44巻を読んだ。 この所のストーリーラインの複雑化で、どうなることかと思いながらも読み進む。 物語の時間も少しづつ流れ、エビちゃんと諏訪さんは結婚式を挙げ、諏訪さんは退職した模 …
【書評】ヴァン・ヴォークト「終点:大宇宙!」-溢れ出る過剰なまでの物語性
行きつけの古本屋に創元推理文庫のヴァン・ヴォークト作品が並んでおり、未読のものをいくつか入手することができた。100円均一であったが、その中でもちょっと高めの値段(といっても420円であるが)がついていたヴァン・ヴォー …
【書評】仁木悦子「猫は知っていた」ー”おかめどんぐり”な主人公による爽やかな謎解き
仁木悦子「猫は知っていた」を読んだ。 1957年に出版された江戸川乱歩賞の受賞作品である。 時代背景は古く、解説にもあるように出てくるガジェットは今のものではない。しかしながら、プロット自体は全く古びてはおらず、謎 …