お酒, 私について

立ち飲み屋の自由と、立ち飲みあるある


 立ち飲み屋(角打ち含む)は通常の居酒屋に比べ、利用者にとって時間的・空間的に自由で、開放感がある。

 キャッシュオンの場合、出入りも自由。

 好きな時に酒を飲み、好きな時に帰ることができる。一緒に行った相手の”もう少し”の粘りにも負けにくいし、一杯だけ飲みたい時などに、5分で一杯で終わっても許される。

 また同時に、お通しやチャージなどの余計なシステムがない(ことが多い)のでリーズナブルである。

 では、立ち飲みは安いのか、と言われると決してそうではない。

 単位時間あたりのコストで見れば、決してそうではないのだ。だらだら3時間で3000円飲むより、5分で1000円の方が時間の密度として明らかに贅沢である。

 そしてその選択権は常に自分自身にある。同伴者など他人が決めるものではない。

 自分の意思で自分の時間を贅沢にすることができるか、そうでないかを自由に決定できるのだ。

 これこそが時間的な自由という意味であり、まさに自分にとっての”酒を飲みたい時間”を最大限有効に活用できるのである。

 酒の席は楽しいが、同時に面倒臭い風習も多い。

 特に”飲み会”だ”接待だ”と、余計なお客間の関係性や、居酒屋でのコースと飲み放題の制限など、店側の都合によって縛られる要素も多い。

 コース+飲み放題などでは、料理の到着するタイミングにより、客側の飲みもある程度コントロールされているようなものなので、結局フラストレーションが溜まるのだ(最近、コース料理で、サラダなどの出来合いものが来た後に、メインが来るまでの何もツマミがない時間が結構あり、この間にやることがなくて酒だけ飲んでえらい目にあることが多い)。

 結局店側の都合(客単価を上げたい)と客側の都合(安く美味く飲みたい)がコンフリクト(衝突)している結果、モヤモヤしたものが残るのである。

 また居酒屋の場合、掘りごたつでない座敷の場合、結構疲れることや、密集した時の空間的息苦しさがきついこともある。

 座布団、椅子では、居場所が定まると同時に、それが自分の所有権になってしまう。そうすると席が決まっているようで実はそれに縛られていることになる。宴会の席の移動で、自分の場所を取られたとか、狭いとか、固定されたことによる無駄なストレスが出てくるのである。

 こうした多人数+席固定の方式は、結局かなり無理があるような気もするのである。

 そもそも酒とは、まず第一に自分の娯楽であって、他人が酒を飲んでも自分が酔うわけではない。まさに寅さんの名セリフそのものである。

お前と俺は 別な人間なんだぞ! 早え話がだ! 俺が芋食ってお前の尻から プッと屁がでるか?

男はつらいよ 第一話

 そうした意味で、個人が酒を飲んで楽しむことの理想形が”立ち飲み”という気がする。

 立ち飲みは時間的にも自由であると同時に、空間的にも自由なのである。

 カウンターに場所はあるが、その場所は固定されていない。お客が入ってくればどんどん移動である。あくまで仮なのである。そして、それは不自由ではなく、一種の共同体意識であって、この店全体が自分の領域のような気がしてくるのである。よほど居酒屋より空間的に広い。いわば、皆の共有空間が先にあって、そこに後から酒場が出現したような”自分の”雰囲気になる。

 角打ちなどもそうで、結局酒屋全体が自分の領域に思えてくる。酒屋の冷蔵庫は自分の冷蔵庫みたいな気分で開けるのである。

 店側にとっても、客がピュアな”呑みたい”という欲望を果たすだけなので、長居もしないし、回転率は上がる。

 支払いもお通しもなく、ピュアな費用だけのやり取りで、支払い方式も前払い(キャッシュオン)が多い。

 自分の分は自分で払うので、奢り-奢られの変な人間関係もない。

 この場は”先輩だがら多めに出そう”とか”この間多く出してもらったから少し出さないと”とか”コイツは今日主賓だからゼロで残りで割り勘だと、いくらになるのか・・・”なんて悩みを、酒を飲みながらやりたくないのである。

 そう、良好な立ち飲み屋は経営側とお客側がWin-Winになっているのである。

 そうした形で立ち飲みを愛している私であるが、色々経験した”立ち飲みあるある”を、以下に列記したいと思う。

 参考記事:【オススメ記事】立ち飲み屋ガイド(随時更新中)

 ご査収ください。

◼️あるある-1
 初見の店で、外から、ガラス越しに店内を見て常連ぽいひとたちがワイワイ盛り上がっていると入りにくい(逡巡した後に勇気を出して入ると、実は中から見られていて”アンタさっき覗いていたでしょ”と言われ恥ずかしい思いをする)

◼️あるある-2
 客数のばらつきが多く、結構気を使う(客が自分1人きりだと余計に気を使って、食べたくもない追加発注や店主としたくもない会話をする羽目に。また逆に突然混み始めると、注文しずらい雰囲気に)

◼️あるある-3
 時々メニューにない”おまけ”とか、常連客のお土産が回ってくる(夕食で食べるようなお惣菜をもらえることも。他人の家に来たみたいな気分になる)

◼️あるある- 4
 カウンターで混んでくると、結構姿勢を注意される。背筋を伸ばしていないと怒られる(構造によっては店員さんの動線もあり、詰めろ、とか、背筋を伸ばせ、とか怒られる。それが名物の店もある)

◼️あるある- 5
 後片付けを手伝うシステムがある(常連さんが自然にやっていると、自分もやらなくてはいけないような気持ちになる)

◼️あるある- 6
 ポテサラに外れなし(個人的な感想です)

◼️あるある- 7
 モツ煮込みに外れあり(個人的な感想です)

◼️あるある- 8
 常連さんと話をしているうちに初対面なのに異常に仲良くなり、仲間意識が芽生える。いつの間にか名刺交換やボーリング大会に誘われたりしている(後で後悔する)

◼️あるある- 9
 毎日決まった時間に来ている常連の老人がいる(角打ちでよくある)

◼️あるある- 10
 テレビや雑誌で取材されていて、それが飾ってある

◼️あるある- 11
 意外とキャバクラの同伴出勤に使われている(時間帯もあっているし、リーズナブルだからいいけど、キャバクラ嬢はどう思っているかは謎)

◼️あるある- 12
 女性が店員にいると口説いている酔っ払いの常連がいる(お勘定を見ると”560円”とかで、ある意味スナックよりガールズバーより破格に安いが、流石に引く)

◼️あるある- 13
 焼酎の濃さが一定しておらず、油断してるとお代わり三杯目あたりで致死量クラスの濃い目がくることがある(客の強さを見て、それに合わせて変えてる気がする。ベロベロでも濃い目がくると無条件で嬉しくなるのは酒飲みの性)

◼️あるある- 14
 ひとりで入店してビール2杯頼み、マスターと乾杯する常連がカッコいい(これはなかなかできない)

◼️あるある- 15
 タブレットを見ていたり、文庫本を読んでる1人客がいると、名店の予感が高まる(黙々と自分の世界に入っていることができる店は名店なのである)

◼️あるある- 16
 サワーが薄い店に限ってハイボールが激濃かったりする(アルコールの濃さではなく、色にこだわる店がある。下戸なのだろうか?)

◼️あるある- 17
 自分が注文したメニュー見て別の人が「こっちにも同じのを」と頼むのを見るとちょっと誇らしくなって、うれしい(なんか自分が影響力を行使したような気になる。向こうから”美味かった”というアイコンタクトを受けたりして共同体意識が高まる)

◼️あるある- 18
 上記のような自由さから、意外と客同士の垣根が低く交流しやすい。これは絡まれるネガティブな面と、偶然良い人と出会うポジティブな面がある(これはあまり公にしたくなが、”出会い系居酒屋”という業種があるが、立ち飲みの方が”出会い系”と親和性がある気がする。そうなってほしくはないが)

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作成者: tankidesurvival

・男性 ・アラフィフ ・技術コンサルタント ・日本国内の出張が多い ・転職を経験している ・中島みゆきが好き ・古本屋が好き