辻井啓作「独立開業マニュアル これだけは知っといてや」(岩波アクティブ新書)を読んだ。
全編関西弁の語り口で面白く読め、かつ、その中身も2003年発行であるが、古びておらず、著者の実感に基づく役に立つことが書かれている。さすがにスマホが登場していないが、それ以外は事務機器などのツール的にも問題なく読める。
やはり形式的なフリーランス本とは異なり、血肉化された経験に基づく”独立本”は面白い。
独立開業(会社経営や個人事業主含む)というのは、サラリーマンと異なり、”精神の独立性、自立性”が強いと思う。そうした中での”経験”というのは、やはりこれもサラリーマンとは異なり、深く刮目する内容が多かった。
独立することの例えを、以下のようなグッとくる例えで述べている。
独立するゆうのはある意味、、無名校でレギュラーになるみたいなもんや。名門校(大企業)にいるより伸びやすいのわかるやろ。けど、無名校のレギュラーがどれほど成長しても、名門校のエースにはなかなか勝たれへん。そのことも忘れたらあかんで。
辻井啓作「独立開業マニュアル これだけは知っといてや」(岩波アクティブ新書)p.9
また実用的なTipsも沢山あり「電話は家庭用のコードレスホンの子機を事務所内で投げて渡せばOK」とか「個人の名刺は不要(悪影響)」とか「某新興生命保険の営業マンは人脈のキーマンになるかも」といったノウハウ系から、会社の作り方、仕事の拡大方法、経費処理などの法務・税務と言った内容も充実しており、非常に面白い本であった。
著者は文化系だが、理科系だと、以前読んだ森田裕之「技術士 独立・自営のススメ」(早月堂書房)も同様の面白さがある。
ちなみに両者は開業した際に事務所をどう構えるか?(自宅と別にすべきか否か)という問いに、全く正反対の回答をしているのが興味深い。どちらもその根拠は納得できる。