岩井俊憲「人間関係が楽になるアドラーの教え」(だいわ文庫)を読んだ。 ベストセラー「嫌われる勇気」などでアドラー心理学が話題になっていた。ただ、これをビジネス文脈まで拡張されると少々牽強付会というか、自己啓発チックな …
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【書評】白鳥千夏雄「『ガロ』に人生を捧げた男 全身編集者の告白」まさにリアル「藪の中」!編集者魂が炸裂している多重構造
白鳥千夏雄「『ガロ』に人生を捧げた男 全身編集者の告白」(興陽館)を読んだ。2019年に「全身編集者」として少部数で出版されたものの改題再販である。 マンガ雑誌として特異な位置を占めていた「ガロ」を発行していた青林堂 …
【書評】連城三紀彦「白光」–人間心理の論理ゲームの集大成のようなミステリ
連城三紀彦「白光」(光文社文庫)を読んだ。 連城作品の特徴である、人間心理を重層的に捉えて一つの主張が次の段階では異なる様相を示すような展開が続き、ラストの驚天動地の展開に至る傑作である。 ただ、物語自体は非常に暗 …
【書評】連城三紀彦「青き犠牲」–現実離れした事件なのに、何故か現実的に読めてしまう荘厳なミステリ
連城三紀彦「青き犠牲」(文春文庫)を読んだ。ギリシャ悲劇である「オイディプス王」をモチーフとしたミステリーである。 著者が得意とする、”内と外の構造の相対性”の発想も盛り込まれており、物語の構造がダイナミックに転換し …
【書評】乙骨淑子「ピラミッド帽子よ、さようなら」–絶筆に終わった”生き生きとした”SF小説
乙骨淑子(おっこつ よしこ)「ピラミッド帽子よ、さようなら」(理論社)を読んだ。 著者の死によって絶筆となった作品であるが、1981年発行のこの初版では理論社社長の小宮山量平によってラストが追加されている。最近の復刻 …
【書評】小松左京「青い宇宙の冒険」ジュブナイルでありながら、ハードSF王道要素たっぷりの読み応え
先日行きつけの古本屋にあった小松左京「青い宇宙の冒険」(角川文庫)を手に取った。懐かしい。高校生くらいで読んだ記憶がある。早速再読。 なかなかの時代めいた表紙とデザイン。1976年発行の初版であった。イラストは長尾み …
【書評】菊池秀行「魔界都市〈新宿〉」–魔物が渦巻く新宿を舞台としたSFホラー活劇の名作
先日古本屋で発見した、菊地秀行のデビュー作、1982年発行の「魔界都市〈新宿〉」(朝日ソノラマ)を見つけた。 表紙がなかなかの時代を感じさせるテイストである。 どことなく剣を構えた主人公や立ち向かうヒロインの姿は「 …
【書評】藤枝静男「悲しいだけ/欣求浄土」私小説のリアリズムの極限に生まれた、SFのようなファンタジーのようなイマジネーションのある豊穣な物語空間
藤枝静男「悲しいだけ/欣求浄土」(講談社文芸文庫)を読んだ。 いわゆる私小説であるが、藤枝静男は、リアリズム的に自分の心理を中心に描き想像力の対極にあると思われた私小説がその極限まで突き抜けると、SFあるいはファンタ …
【書評】村松友視「トニー谷、ざんす」–まるで”ひとりエレパレ”のような戦後に現れた大スターの「謎」
村松友視「トニー谷、ざんす」(毎日新聞社)を読んだ。 戦後すぐに現れた芸人であり、”大スター”トニー谷についてのエッセイである。 永六輔やトニーの妻など、関係者の証言も多く載せられている。 トニー谷という存在は、 …
【書評】連城三紀彦「離婚しない女」–同心円状の外と内がひっくりかえるような感覚の恋愛ミステリ
連城三紀彦「離婚しない女」(文春文庫)を読んだ。中編の表題作と、「写し絵の女」および「植民地の女」の短編2編で構成されている。 名作「恋文」や本格ミステリ「人間動物園」で描かれた、心理劇+どんでん返しを味わうことがで …