あまり美術については知識がないのだが、好きな画家として”イヴ・タンギー(Yves Tanguy)”というシュールリアリズム系の画家がいる。
学生時代に良くかかるハシカのような感じで、ダダイズム、シュールリアリズムの芸術をカッコいいと思って色々眺めていたことがあり、その時にこの画家の絵を見て好きになった。
その後の生活で、美術的な情報を自分にインプットしてこなかったものの、”好きな画家”としてタンギーの名前は常に頭の中に残っていた。
タンギーの絵は、生物のような生物でないような、定形であるような不定形であるような、よくわからない粘性のある曲面形状群が、地球のような地球でないような、静かな空間に佇んでいる構図が多い。
その空間のはるか向こうには空と地上を分つ地平線があり、絵画には描かれない角度にから光が差し込む。その結果として、不定形な形状群に、豊かで遠く伸びた影が寄り添う。
視覚を用いない人が実在を視覚的の表現したようにも解釈できる風景であり、過去の地球のある瞬間に実在していたような懐かしさを覚える風景である。
ありそうなフィクション、なさそうなリアル、歴史以前の歴史、そうした不確定さを見るものに訴えて来る。
タンギーは独学で絵画を学んだらしい(以下、wikipediaからの引用)
ジャック・プレヴェールの紹介で、1924年にアンドレ・ブルトン率いるシュルレアリスム運動の画家達と出会う。それからタンギーは独自の絵画様式を身につけ、1927年には初めての個展を行った。この個展を見てブルトンは、タンギーを「もっとも純粋なシュルレアリスト」であると評した。
ゴールデンウィークには個人的にまだ入ったと宣言したくないが、家にいるのも辛気臭いので、突然、ネットでタンギーの絵画を鑑賞できるところはないか調べてみた。
すると、横浜美術館に1点所蔵されていることがわかった。
『風のアルファベット』という作品である。
そうとわかれば、レッツゴー(三匹)である。
横浜美術館の前。いい天気であった。
コレクション展をやっている。よしよし。500円を払って館内へ。
・・・・・・・・・・・・・・・・ないんですけど。
「自然を映す」というテーマに、確かにタンギー先生はそぐわないけど、そういう場合にはどこか「それ以外の常設展示」のような空間があることを期待したが、なかった。
まあ、このコレクションはこれはこれで良い。ルソーとかセザンヌとかイサムノグチとかど素人でも知っている作者の絵画は鑑賞できた。
でも、目当ては別にあったので、納得できず、係員に尋ねた。
私「ええっと、このコレクション展ですけど、横浜美術館のWebで”所蔵されている”と書いてあった絵画がないんですけど(もじもじ)」
係員「何の作品ですか」
私「(どうせタンギーなんてわかってもらえないだろうから、絶対に今回のコンセプトとは相容れない)カンディンスキーとか〜(もじもじ)」
係員「・・・コレクション展は、このリストになります」
と出品リストを渡された。いや、もう一通り見たので、無いことはわかってるんだけど。
私「え〜じゃあ、所蔵されていても、展示されていないってことがあるんですね」
係員「そうなりますね」
ということで撃沈である。
図書館のようなイメージで、所蔵してあれば閲覧できると思ったのが甘かった。さすが美術館、レベルが違うぜ(負け惜しみ)。
ショップで絵葉書くらいあるかと探したが、なかった。別のタンギー作品(輸入品であろう)はあった。マイナー作家を追いかけるのは大変だ。タンギー先生の不遇にも少し同情する。
上記絵葉書は、”Dark Garden”という作品らしい。暗いが、地平線と曇天の間に、不定形な形状群が配置されている。
仕方がない。金で解決すればいいんだろ、ということで『横浜美術館コレクション選』を購入。2,400円くらいした(うろ覚え)。
これが『風のアルファベット』である。
いつかは実物を見たいものである(諦めの境地で)。