マトリックス型組織の問題点:ポンコツ神輿=報告だけのリーダーと「仁義なき戦い」

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   長く社会人をやっていると、ある時期に、変な仕事、あるいは役割が生まれ、それを押し付けられる羽目になることがある。

   比較的大きめなプロジェクトで複数テーマを並行して走らせた際の経験として、定期的に上層部へ報告するだけの「報告者」という役割が出現したことがあった。

   部門を横串にしたプロジェクトチーム(タスクフォース)を編成するので、チーム内のメンバーの関係性は必ずしも定常組織の上下関係ではない。テーマのリーダーが設定され定期的な報告をするのだが、大規模プロジェクトになり、かつ、定常組織を残しつつ、プロジェクトチームを共存させるような組織体制をとった場合(いわゆるマトリックス型)には、チーム員は専任ではなく、通常の組織の業務をしつつ(所属を残しつつ)プロジェクトチームの業務もする兼任体制になる。

 マトリックス組織(wikipedia)より引用

マトリックス組織(マトリックスそしき)は、網の目型の組織形態で、従来の職能別組織にそれら各機能を横断するプロジェクトまたは製品別事業などを交差させたもの。

構成員が自己の専門とする職能部門と特定の事業を遂行する部門の両方に所属する組織であり、プロジェクトに対する管理上の責任と専門技術上の責任を明確に分離することによって、単純なプロジェクト管理組織の難点を解消するように設計された形態である。情報の流通が大きくなる長所がある一方、各組織構成員が複数の上司から指示を受けるワンマン・ツーボスシステムのため、命令の一元化の原則に反し、組織が混乱することがある。

引用終わり

   図示すると、上記のように縦串と横串を組織に刺した構成となる。

   定常組織は、その進捗管理における各人の役割、統制が既にきちんと定義されているのでお互いわかりやすい。いわば、報告が課員→主任→課長→部長といった業務の流れと統制が等しくなる。これは特に問題が起こらない(業務の成果の質やスピード感は置いておくとして)。

   この定常組織を残したまま、横断的なプロジェクトチーム(タスクフォース)を作成した場合どうなるか。課員は現状の組織の一員である同時にチームの一員にもなり、別のリーダーとの関係が新たに生じることになる。この場合、課員でありかつメンバーである構成員にとっては、自分の業務の優先順位をどう定義するか、という問題に新たに直面することになる。

   さらに、会社組織における権力の源泉の一つである「人事評価権」は、通常プロジェクト側にはなく、定常組織側に残すことが多い。

   これはマトリックス型組織の弊害であり、このあたりをうまくハイブリッドにやるんだ、という組織論も見かけるが、うまくいっている例は寡聞にして知らないし、マトリックス型組織が持つ本質的な問題点であると思う。

   どうしても課員は、人間心理として評価される側に力点を置く。そうなると、プロジェクトへのインセンティブは相対的に低くなる。これは被評価者にとっての至極当然のことであって、非難されることでは全くない。生存戦略としても合理的な判断である。

   その結果、生まれるのがプロジェクトチームの「名ばかりリーダー」、「報告をするためだけの役割」である。

   課員は、一応業務なので、プロジェクトチームの中でも結果は出すべく動く。だけど、その結果をより良くするためのプロジェクトチーム側のグリップ(統制)は、大きな効果を及ぼさない。何故ならチームリーダーには彼らの人事評価権がないのだから。 

   チームリーダーにしても、当人に対する人事評価権がないので、どこまで権力を行使して良いかわからない。下手をすると、定常組織の彼のボスとの関係を悪化させることになる。

   そうした妥協の中で、資料を当日、ひどい場合には発表直前に渡されて、それをそのまま報告する羽目になる「名ばかりリーダー」が登場するのである。

   業務自体はわかっているので、当日ギリギリに資料をポンと投げ渡されるように送ってこられても報告自体はできる。ただ、その報告に厳然と存在する手抜き感、「新たな課題認識」や「停滞している要因を解決するための方策」の、検討の浅さについて、作成者に問いただす時間はわずかしかない。

   その結果、当日渡された資料を報告するだけのリーダーは、警察に逮捕されるためだけにガサ入れ直前に採用された風俗店の雇われ店長と同じくらい何の力もない。ただただ、報告会の席上でボコボコになって大炎上するのである。

   かつて私も同様な経験で痛い目にあったことがある。

   報告30分前。

   資料が届かない。

   催促すると迷惑そうに「今やってます。こっちのチェックがあって」というつれない返答。

 そして送られてきた資料は、ツッコミ要素満点。

 前回の指摘に回答していない、などの基本的なところが抜けているものすらある。

 (”こっちのチェック”って、いったい何をチェックしていたんだよ)と心の中で毒づくも、時間は迫る。

   「え〜この内容で、俺にあの怖い上司の前で報告しろっていうの」と嘆くも、結局腹を括って、何事もなかったように堂々と報告する。ボコボコにされながらも、首の皮一枚で生還し、指摘事項をメンバーに送るが、回答があるのはまた1週間後、報告の直前・・・・。

   報告者としては、ポンコツ神輿に乗せられたようなもので、どのみちポンコツ神輿に乗せるならもう少しうまく担いで欲しいのだ。

   かつて、そうしたことについて、少し愚痴を言ったところ

親っさん、言うちょいたるがのう、あんたははじめからわしらが担いどる神輿じゃないの。組がここまでになるのに誰が血ぃ流しとんの。神輿が勝手に歩ける言うんなら、歩いてみいや、おう! (「仁義なき戦い」坂井鉄也)

   というメールが返ってきた。ちびった。

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