菊池秀行「吸血鬼(バンパイア)ハンター”D”」(ソノラマ文庫)を読んだ。
本当に今更ながらであるが、初読である。
1983年出版の作品で、菊池はこの作品を執筆当時33歳。
いわゆるSF伝奇的な作品で、戦闘など胸躍るシーンも多い。吸血鬼伝説をモチーフとしつつ、遠い未来の世界(12,090年)における吸血鬼と人間の相克を描いたものである。
この作品だけでは解けない謎(主人公”D”の出自や、謎の声の存在など)もあり、歴史スペクタクルとしても重厚であり、文体も一部講談調(弁士語り)もあるが、それが古びた感じもなく、むしろ活劇を描く意味で良い効果を出している。
シリーズ第1作であり、主人公”D”の超人性を際立たせる部分に加え、物理的な弱点の存在や、心理的な二重性(相反する部分)などもあり、物語の造形としても非常に魅力的かつ重層的な設定となっており、一気読みである。
今オッサンが読んでも心ときめくので、これを中高生時代に読んでいたら、きっと、どハマりしていたであろう。
ちなみにフィジカルな本、要するに実体的な紙としての媒体で読んだ(実家から持ってきた)わけだが、今現在ではこのシリーズの初期の巻は、電子書籍と紙媒体の価格差が凄いことになっているようだ。