【書評】宮島未奈「成瀬は信じた道をいく」ーぶれない強固な軸を持った主人公成瀬が突き進む


先日(1/24)発売された宮島未奈「成瀬は信じた道をいく」を読んだ。

前作「成瀬は天下を取りにいく」同様、クールな主人公成瀬あかりと、その周囲の人々の日常が滋賀県大津を舞台に繰り広げられる青春小説である。

前作で中学生〜高校生だった成瀬は、本作で大学受験を経て大学生となる。チャレンジ精神は相変わらずで、自分の理想に向かって観光大使から平和堂フレンドマートでのアルバイトまでパフォーマンスの幅を広げている(本作最終編では更にレベルアップする)。

成瀬がもつ強固な軸は今回も全くぶれず、多少の動揺をみせるシーンがあっても、基本的には自分じしんで解決していく(他者や外部環境に依存しないようにもみえる)姿は、どこまでもクールで美しい。自分の人生を自分でクリエイトする意思を強く感じる。読者それぞれが羨望も交えてイマジネーションを膨らませることのできる人物像である。

あまりに孤独に強すぎるので、成瀬自身は今後他者を必要としないのか?という不安すら覚える。成瀬フォロワーは多いが、いまのところ成瀬サイドから求めているのは漫才コンビ「ゼゼカラ」の相方、島崎みゆきだけのようだ。そのあたりの展開は今後描かれていくのだろうか。

今回の作品中で、個人的には、独特のぶっきらぼうな口調が特徴の成瀬が丁寧語でも喋れるシーン(p.140)と、電車内で「ファインマン物理学」を読んでいるシーン(p.131)がグっときた。

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