吉本隆明(追想・画 ハルノ宵子)『開店休業』(プレジデント社)を読み返している。 80歳台に入り、肉体的にかなり弱ってきた吉本先生が、静かに老いを迎えていく中で、”食事”や”味”について語っている。 まさしく親鸞の還相回 …
カテゴリー: 読書メモ
【書評】結城昌治『軍旗はためく下に』:聖戦の大義と組織の腐敗
深作欣二により同名で映画化されたことでも知られる、昭和45年の直木賞受賞作である。 あとがきによれば、著者は東京地検に勤めていて、昭和27年「講和恩赦」における恩赦事務に従事する際、大量の軍法会議の記録を読み、日本陸軍の …
【書評】中島らも『心が雨漏りする日には』は猛毒が仕込まれている
中島らも先生は、一貫して強靭な自意識を保ちつつ、ドラッグや酒に対峙することができた稀有な人物だと思う。 若い頃からの睡眠薬の過剰摂取に始まり、アル中、ドラッグなどの経験や、メンタル的な病を抱えての生活など、通常であればそ …
【書評】『吉田豪の”最狂”全女伝説』を読んでノスタルジックな気分になる
女子プロレスには思い入れがある。 世代としてはクラッシュ・ギャルズ世代であり、テレビ中継での極悪同盟との抗争に熱狂した。社会人になった頃には全日本女子の経営悪化、GAEA JAPANの台頭などの状況変化があり、時間とお金 …
【書評】ビジネスパーソンは競技のプレイヤーなのだろうか:ケン・ブランチャード『社員の力で最高のチームをつくる《新版》1分間エンパワーメント』
今さらながら言うことでもないが、ビジネスは団体戦である。 私自身は個人の力を強く信じる立場のものであるが、団体戦の効果の優越ということは認めざるを得ない。 団体戦には「集団知」というような、個人の能力を単純合算した …
【書評】暗黙知である設計意図の言語化:北山一真『プロフィタブル・デザイン iPhoneがもうかる本当の理由』
製造業に限らないが自らの競争力維持・獲得のために、業務プロセスの改善サイクルを常に回していく必要がある。 特にITという手段を使って設計改善・設計改革を進める場合、本当の意味でその改革が効果を上げているのかどうか、あ …
【ブックガイド】説教臭くない稀有な酒飲み本・マンガを探せ!
酒と読書(マンガ含む)はあまり相性が良くない気がする。 飲酒は酩酊的であり、思考を分裂される方向に作用するが、読書は理性的であり、思考を統制・集中する方向に作用するからであろうか。 読書はどちらかというとコーヒーなどが合 …
【書評】嵐山光三郎「漂流怪人・きだみのる」ー文明批評される側の論理
嵐山光三郎『漂流怪人 きだみのる』を読んだ。 きだみのる(山田吉彦)は、岩波文庫『ファーブル昆虫記』の翻訳で業績のあるフランス文学者である。在野で過ごし、戦後は文明批評で有名であった、というのが一般的な世評である。 …
【書評】倉田喜弘『明治大正の民衆娯楽』ーメディアとしての芸能「講談」の隆盛と衰退の背景(追記あり;再販されました)
倉田喜弘『明治大正の民衆娯楽』(岩波新書)を読んだ。 明治、大正の様々な–既に廃れたものや、今なお形を変えて続いているものもある–芸能が解説されている。時代背景も含め、興味深く読んだ。 例えば「娘 …
【炭鉱労働】上野英信と山本作兵衛を読んでブラック労働を考える【書評】
この記事は、過重労働問題、特に現在日本で直面している労働の課題について相対化する意図はないことを冒頭で記しておきたい。 ・上野英信『追われゆく坑夫たち』(岩波新書) ・山本作兵衛『画文集 炭鉱( …