【書評】つげ忠男『けもの記』の続きが読みたい

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好きなマンガ家の一人に、つげ忠男がいる。

『無能の人』で有名なつげ義春の弟で、兄のようなシュールさ、リリシズム、ユーモラスな作風には遠く、底辺労働者の生活や辺境の地を舞台にした、やりきれない現実を描いた作品が多い。

ただし、その絵柄は非常にドライでむしろスマート、対極にあるはずのわたせせいぞうのタッチに近い感じすら見受けられる。

マイナーマンガ雑誌「ばく」に1987年に連載されていた「けもの記」を追いかけていたが、雑誌の休刊(最終号には、雑誌の目玉だったつげ義春が”落とした”結果、インタビューが掲載されていた記憶がある)により、未完のままのようだ。

「けもの記」は、ある場末の街で起こった殺人事件の犯人の生い立ちを刑事が追いかけるストーリー。犯人やそれらをめぐる人々にとって、高度成長が終わり日本の労働環境が激変する時代環境が、行動のバックグラウンドとして強く示唆されるところで終了している。

まだ現役なのかは全くわからないけど、続きを描いて欲しいなあ。

つげ忠男『つげ忠男漫画傑作集3 けもの記』(ワイズ出版)1996年

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