本日紹介するのは、「覆水盆に返らず」ならぬ、「覆水盆に返る液体」について。
本日の論文
(1)岡小天「生物流体物理」日本物理学会誌.23(1968)p.828-837
著者はレオロジーの理論物理学者。シュレーディンガーの『生命とは何か』(岩波新書)の翻訳者でもある。
レオロジーとは複雑な液体や固体(例えばマヨネーズや歯磨き粉のようなネバネバしたりねっとりしたりするものとか)を対象として、その流動や変形を取り扱うジャンルである。
この具体的対象としては生物などに多く存在し、こうした”流れ”は通常の液体(例えば空気とか水とか)の範疇としては捉えきれない。
この論文(紹介記事か)でも、そうした例として
・ 細胞原形質の流動
・アメーバや白血球の運動
・血液、リンパ液の流れ
・関節液
・気管支分泌液
・眼の中の前眼房水
・カイコの絹糸、クモの巣の原料となるタンパク溶液
・ヤツメウナギの表皮分泌液
・植物内の樹液の流動
などが挙げられている。
それぞれ興味深いが、その中でも、著者自身がその文章で「覆水盆に返るである」と紹介する粘弾性液体がある。
パラフィンを主要液として、5%アルミニウムラウリン酸と1.5%のキシレノールからなる液体は、弾性(ワンピースのルフィみたいにゴムのように伸び縮みする性質)が強い液体だそうだ。
その様子を示した写真が掲載されており、コトバで説明すると、
①ビーカーからお皿に液体を注いでいる
②その途中に、ビーカーとお皿の間にある液体をハサミで切る
③すると、切られた残りはまだビーカーとつながっているが、お皿の上にある
④しかし、その残りの液体は落下せず、バネのようにビーカーの中に飛び上がってビヨーンと戻る。
日本語で説明したのでわかりにくくてすいません。原論文にはその動きがわかる写真がある(文献(1)の第13図)ので、興味がある方は参照されたい。