花月園駅の角打「江戸屋斎藤商店」の前で、店に入るかどうか、しばらく迷っていた。
たしかに看板には店内で飲める旨が記載されている。その一方でガラス扉越しには、結構な荷物が見え、酒屋として営業しているのかどうか判断がつきかねていた。
少し近づいて店内を覗いて見る。カウンターも見えず、でも灯りはついている。酒の棚も冷蔵庫も見えないし、やはり営業しているのかどうか、悩ましい。倉庫のようでもある。
もう引退して店を畳んだ老店主が住んでいるだけなのではなかろうか、などとも考えている。
しばらく行ったり来たりして悩んだ。こんな悩みをしたのは初めてではなかろうか。
逡巡の末、勇気を振り絞って入店。
「いらっしゃい」・・・ちゃんと営業していた。
店内奥にテーブルがあり、お酒が飲める。
空間的には倉庫のような所に飲食スペースがあるという感じなのだが、酒屋としてのあるべきディスプレイがほとんどないので、角打ちのようで角打ちではないような不思議な感覚に襲われる。
壁に貼ってあるメニューは、紙に手書きであったり、窓に置いたダンボール箱にメニューが貼ってあったりと、なんか雰囲気が他の店と違うのである。空いている倉庫で、たまたま営業してみました、というような。
店主は当初予想の引退した男性老人かと思いきや、お姉さんはなかなか美人で、愛想も良くて親切である。
またもや店の雰囲気とのギャップが。入店のときの心理ハードルは何だったのか。
キリン大瓶を発注。500円。
この写真だけ見ると留置場?みたいな感じ。
まあ、留置場でビールは飲めないであろうが。
ツマミも少ないながらしっかりしていて、モツ煮込み豆腐入り500円。うまい。
店の入口ゲートで、完全に近所の常連しか集まらないような無駄に敷居を高くしたような雰囲気がある。その結果、入店したあとも、他人の家に来て勝手に酒を飲んでいるような、不思議極まりない感覚の角打ちである。
これまで訪問した、どの角打ち、立ち飲み屋にも無かったエキゾチックな雰囲気を味わえる珍しい店である。