南日本新聞社編「戦火の漂流42日 太平洋に流され敵潜水艦に捕われる」(光人社NF文庫)を読んだ。 漂流ものは、まさにサバイバルであり、色々読んできた。 本書は、その副題にあるように、単なる漂流による過酷な環境での生 …
カテゴリー: 読書
【書評】半藤一利「指揮官と参謀 コンビの研究」人と人の化学反応による組織的行動、そして人材マネジメントにおける”失敗の本質”
半藤一利「指揮官と参謀 コンビの研究」(文春文庫)を読んだ。14組の指揮官と参謀の組合せと、それによる組織的行動の”失敗”を系時的に描くことにより、昭和初期の満州事変から太平洋戦争敗北に至る日本という”組織”の課題を「 …
【書評】清水きん「夫 山本周五郎」へそ曲りの山本周五郎を支えた奥さんの回想による、もうひとつの”山本作品”
清水きん「夫 山本周五郎」(福武文庫)を読んだ。 山本周五郎も好きな作家で、新潮文庫で随分読んでいる。大学時代、理論物理のゼミ発表のため徹夜をして準備している最中に、思わず手に取った「さぶ」(新潮文庫)を一気読みして …
【書評】スティーヴ・ハミルトン「解錠師」–金庫と”対話”する、言葉を失った少年のモノローグ
スティーヴ・ハミルトン「解錠師」(ハヤカワ文庫)を読んだ。テレワークで孤独に苛まれている精神状態ともマッチして、しみじみと良い小説であった。 とはいえ、小説としては犯罪小説である。主人公の才能は天才的な「金庫破り」で …
【書評】村松秀「論文捏造」-ベル研究所の世紀の大捏造事件と”発見”の栄誉の正統な帰属とは
村松秀「論文捏造」(中公新書ラクレ)を読んだ。アメリカにおける最先端研究所であるベル研究所で、2000年から起こった「世紀の大発見」と、それが研究者による不正行為(データの捏造)であったことが判明するまでのドキュメンタ …
【書評】ジョナサン・ラティマー「処刑6日前」(創元推理文庫)カウントダウン・サスペンスの傑作だが、惜しむらくはポリティカル・コレクトネスが気になる
ジョナサン・ラティマー「処刑6日前」(創元推理文庫)を読んだ。1965年発行で、文庫の装丁は司修である。 死刑を6日前に控えた死刑囚である主人公ウェストランドが自らの無実を晴らすことを決心する。限られた時間、死刑判決 …
【書評】ジョーン・ロビンソン「思い出のマーニー」(岩波少年文庫)–自らの中にある<過去>との対話による救済とは
先日ジブリ映画を地上波放映していたのか、周囲で「思い出のマーニーが良かった。泣けた」という声を聞いた。さいきん精神的な疲労なのか、長めの動画を見るのが億劫になっている。特に序盤がきつい。小説だって似たようなものだと思 …
【書評】谷川ニコ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」17巻–高校生の心理戦からツイスターゲームになり、最後はシャワー覗きに至るスペクタクル展開(喪168)
谷川ニコ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」17巻を読んだ。さすがにいい年をしたオッさん(私)が、高校3 年生の学園ものを読むのはちょっと苦しいものがある。特にこのところのリア充路線だと、本当に青春ドラマに …
【書評】新型コロナウイルスが猛威を振るう中の出張の東海道新幹線車内で読んだバイオパニックものの傑作、安生正「生存者ゼロ」
2020年に入り、武漢発の新型コロナウイルスは終息の兆しは見られず、社会生活にダメージを与えつつある。私の周りでも、武漢渡航のチャーター便に乗って帰ってきた同僚とか、中国出張禁止といった直接的なものから、感染経路が不明 …
【書評】福田恆存「人間・この劇的なるもの」進歩主義の欺瞞を暴いた”奴隷の思想”の瑕疵と、<部分の中にある全体>概念導入による修正
はじめに 福田恆存「人間・この劇的なるもの」(中公文庫版)を読んだ。1956年、戦後11年経た頃に発表された論争的な書である。 当時の世相状況は、第二次世界大戦敗北後のサンフランシスコ講和条約が成立(1952年)した …