先日新潟出身のお婆さん(東京在住)から、こんな話を聞いた。
- 新潟(長岡)で子供の頃に食べた野菜の煮物が懐かしくなった
- 新潟は冬の間に野菜がないので、体菜(とうな)という野菜を保存のため塩漬けにする
- その塩漬け野菜を塩抜きし、その野菜と、これも大豆保存食である「打豆」を加え、再度煮て、味付けをして食べた料理で、名前はそのまんま「煮菜(にな)」という
- ちょうど新潟出身の幼馴染が来たので、その話をしたら、向こうも懐かしくなり、帰ってその野菜を送ってくれた。自分で「煮菜」を作って食べて見たら懐かしかった
という話である。私自身長岡付近はよく出張に行き、色々その名物を聞いてきたつもりであったが、全く聞いたことのないものであった。
塩漬け野菜を煮出すということでいえば、柳田國男の本で以下のような記述がある。
実際永い冬季には塩した青物しか得られなかった。すなわちあの方面の人たちが今も食っているごとく、野菜塩蔵の本来の目的は、これを塩出しして煮て食うにあったのである。
他でも漬け物を煮て食おうとする土地が折々ある。(以下略)
柳田國男『明治大正史 世相編』「食物の個人的自由」「五 野菜と塩」より
引用終わり
少し興味が湧いてきたので、次回の長岡出張の際に探して見ることに。
ただ、気になったのは、その料理を食べたお婆さんの娘さん(東京生まれ)が、おそらく生まれて初めて食べたのであろう「煮菜」の感想として
「野菜がクタクタしていて、はっきり言ってうまくなかった。また食べたいとは思わない味」
という、どストレートな感想を述べていたのが少々気になるところではあった。
で、長岡出張の際に、タクシーの運転手さんに聞いてみることに。
やはり知っていた。
「季節になると各家で塩漬けにして、少しずつ食べるんです」「お年寄りは今でも良く食べてますよ」とのことであった。気になる味について聞くと、「いや、結構うまいですよ」という感想も聞けた。
新潟は雪景色である。
帰りにスーパーの漬物コーナーへ。
あった。
丸七食品「体菜の水菜」である。事前に塩出しを済ませてくれている優れもの。
レシピを見ると、味噌か醤油で味付けをする模様。茎と葉っぱが半々くらい。
打ち豆も新潟のメーカのものを購入した。
「打豆」と油揚げを投入、味噌ベースで味付けしてみた。
結果、「うまかった」。
野菜としては青梗菜のような感じの食感であり、決してクタクタはしていない。これは塩漬けからやっていないという違いであろうか。
いずれにせよ、優しい味で、ご飯のおかずに十分である。
参考リンク(外部):新潟郷土料理 漬けた体菜の煮付け